6月19日 月曜日 〜 20日 火曜日

イラン旅行 プロローグ 入国まで

2006年6月。イランへ旅行に行ってきた。すべてが新鮮で見所の多いこの国を巡るのに与えられた時間はたったの1週間。イラン人達に「なんでもっとゆっくりしないのか?」とあきれられながらも一気に駆け抜けた充実の旅行でした。

旅のスタートは、今回一緒に行ったマイク(仮称)の住むパリ。ドバイ経由のエミレーツ片道切符でテヘランを目指します。夜発の飛行機なので「時間に余裕があって良いよね〜」なんて言いつつも、あれやこれやでおせおせになって結局大あわてで空港に着くのは我々の得意技。空港がすいていたので最後にはかなり余裕があったけど。

ただ、チェックインの時に一つ問題が。実は今回、イランを出るのは陸路でトルコに、というプランでして、さらにマイクがパリでイランのビザを取るのに失敗、現地の空港でビザを取得する計画での出発でした。それがチェックイン時に問題になり、「ビザを持っているか、もしくは出国日時を証明できるもの(帰りの切符など)が無いと乗せるわけにはいかない」と言われ、さらに「どうしても行きたいなら、下の階にチケットオフィスがあるからそこで帰りの航空券を予約してきて下さい」などといわれ目が点。そんな空港で航空券を買えるようなリッチマンに見えるかい!!断固譲らずにもめた結果、「現地でビザが取れなかったり何があろうとも、我々航空会社は一切面倒を見ないので自力で勝手に何とかして下さい」という旨の書類にサインをさせられ、無事に搭乗できることに。一安心。妥当な対応をしてくれたんじゃないかな。
 しかし同時に、もし彼らが言っているとおり、テヘランで「帰りの航空券がないのでビザはやれない」なんて言われたらどうなっちゃうんだろう?一応、空港でビザが即時発給されることとそのときの必要書類は念を入れて確認してきたのですが、しかし相手は未知なる国イラン。何があってもおかしくないぞ。一抹の不安を抱えつつも、持ち前の楽天性を発揮し行けるとこまで行こうと気分を切り替えて出発しました。

今回初めて利用するのはアラブ首長国連邦のエミレーツ航空。乗り継ぎと夜発朝着という時間とを考慮して決めたのですが、他のヨーロッパ系やトルコエアを使うよりもこっちの方が気分出るかな、というのも正解でなかなか良いフライトでした。リッチなアラブの航空会社、ということで今まで乗ったどこの航空会社とも違う雰囲気がありました。フライトアテンダントの服装もかなり雰囲気出てます。対応はフレンドリーでありかつとてもプロフェッショナル。アジア系のかわいくて親しみやすいスチュワーデスさんとは全然違った優雅な趣でした。

各座席に着いているモニターの表示はアラビア語がメイン。アラブが目的地な訳ではないけれど、中近東に行くぞ、っていう気分が高まります。
機内食もポイント高かった。僕が頼んだのはアラブ風のチョイスの方で、羊のカレーのようなものがメイン。よくしらないジャンルでなんだかさっぱり分かりませんでしたが、ともかく美味しかったぞ。見た目もこじゃれているし、入れ物も全部瀬戸物でした。マイクの頼んでいた洋食チョイスもかなり良かったです。

 エミレーツは機材もきれいで新しく、一気にお気に入りエアラインの一つになりました。

飛行機は一路ドバイへ(といっても、イラク上空はさすがに迂回していたが)。軽く一眠りしたらあっという間に着いてしまいました。ドバイの空港はどんなものか、なかなか興味があったのですが、もともと接続が良かった上に飛行機が少し遅れてしまい、ほとんど見る時間がなかったのが残念でした。

早朝のドバイに到着。タラップに出るとむあっと暑い空気が。空港は至って近代的、かつすごく忙しそうでした。
近代的な空港に間違いないのですが、いろんなところにアラブテイストがかいま見え面白かったです。

アラブ・イスラム文化とオイルマネーと欧米資本が渾然一体としている感じの空港でした。

あんなところにも、アラブテイスト発見。
あっという間にテヘラン行きの出発時刻に。ドバイ上空の風景も面白かったです。広大なすなすなの大地に超近代的なビルや高速道路がならんでいます。不釣り合いといってしまうのは簡単ですが。。。ここら辺もいつか訪ねてみたいな、と思いました。
テヘラン行きの飛行機のトイレの中でこんな注意書きがありました。6カ国語で書かれていますが、一つも読めないぞ!!どれが何語か、誰か教えてくれ。
朝ご飯はこんな感じ。感動と言うほど上質ではないですが、普段よく乗る米系各社なんかより全然良いぞ。マメがいっぱいあったりするのはちょっと新鮮。
飛行機はペルシャ湾を越えイラン領内に入ります。海岸沿いの暑そうな平地はすぐに終わりザグロス山脈の山並みが近づいてきます。
 聖徳太子よりはるか昔の時代から、数々のペルシャの王朝がアレクサンダー大王たち周りの勢力と覇を競って勃興を繰り返してきた舞台です。まさにその大地が今眼下に広がっているんだなあ。。。


ほどなくテヘランに無事に着陸。ついたのは最近、稼働し始めたばかりのイマム・ホメイニ国際空港。今、本格稼働に向けてどんどん各国航空会社が移ってきている途中らしく、すごく近代的ながら閑散としていて不思議な感じでした。もうこの時点で、我々の固定観念的なイランのイメージにそぐってないのですが、しかし我々は強い思いこみと妄想を抱きながら、ビザ発給オフィスへ向かいます:
「イランのビザ担当官なんて何を言ってくるか分からない。大体こういう途上国とか強権国家は担当官の気分次第で何でも起こりえるしな。もしビザはくれない、って言い出したらなんて反論したらいいだろう?少しでも機嫌を損ねないように、暑いけど長袖の襟付きシャツを着ていこう。最初の一言はナチュラルに「ハロー」が良いだろうか、それとも郷に従い「サラーム」と行くべきか...」

 この時間、着いたのは我々の便だけらしく、ドバイから来る観光客などほとんどいないのでしょうか、まわりにいるのはほとんど中近東風のビジネスマンっぽい方々ばかり。緊張しながら列の後ろに並び順番を待つ。対応しているのを見ると、よれた服を着たやせた厚いめがねの気のよさそうな年配のおじちゃんが、しゃがれ声で指示を飛ばしながらてきぱきさばいています。大きなガラス張りのカウンターに小さい窓口が着いていてそこからパスポートなどの書類を出し入れしています。なんだかこりゃ、ごねるとかワイロだとか、そういう感じじゃないなあ。。。なんて思っているうちに順番が着て、分かりやすい英語でビジネスライクに対応され、大いに拍子抜け。
 少し待たされましたが、まったく問題なくビザをもらえました。延長可能かとか、いくつか細かい質問をしましたが、それなりに丁寧に答えてくれました。どうやらこのビザオフィスは権力の末端にすぎずほとんど権限は持たされていないんだろう、なんて勝手に想像をふくらませながら、いざ入国。

 すでにみんな入国してしまった後で、誰もいなくなった近代的な入国ゲート。暇そうな入国担当官のおにいちゃんが「ようこそイランへ」とにこやかに挨拶してくれました。 (次回に続く)


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今日のトピック: 「イランなんて行けるの?」

想像がつくかもしれませんが、帰国後、イランに行ったよ、と知り合いに言うと十中八九驚かれます。「イランなんて行けるの?」と聞き返されることがとても多いです。約半分は安全なのか、治安に問題ないのか、という懸念。残りの半分は「そんなに簡単に入れてくれるような国なのか」という疑問。

 実はどちらの質問も的はずれで実態に即していません。イランというと、どうしてもイラク・核兵器と連想してしまったり、シーア派と聞いて悪いイメージを持ってしまったりするようです。もちろん、僕も最初はいろいろ思いこみがあって、調べてみたり実際に行ってみたりして初めていろんなことが分かった、ってわけですけどね。安全面や治安についてはまた後日にし、今日は入国に関して。もし実際に行ってみたいぞ、という方がいらっしゃったら参考になるかと思います。(ただ、内容には正確を期していますが一般論としてビザに関する事柄はしばしば変更があったりしますので、確認・決定など自己責任でお願いします。)

 さて、イラン入国にはビザ取得が必要です。その意味で、ビザ無しで行ける国々と比較し行きにくい国であるのは事実です。しかし、日本人にとってこのビザ取得は実はかなりハードルは低いのです。ちなみに、アメリカ人にとってはなかなかこれは困難で、アメリカにイランの出先機関自体がほとんど無いし、個人が個人旅行のためにビザを取得するのは絶望的で、ツアーに参加するのが一般的なようです。イスラエル人に至っては可能性は0のようです。

 今回、僕は東京のイラン大使館に出向いてビザを取りました。6/12月曜日に申請し、言われたとおり15日木曜日に出向いて問題なくもらえました。よゆう〜。必要書類や料金などはイラン大使館のホームページで確認できます。郵送での申請もできるようですし、この分だと旅行会社に頼んでも簡単なんじゃないかな。僕がもらったのは90日間有効で、30日滞在可能なシングルビザでした。イラン大使館、麻布にあるのですが、場所がちょっと不便なのが難点。バスをおすすめします。

東京で取ったイランビザ。シールだけれど、アラビア文字やアラビア数字が良い感じ。ぴかぴか光っているイランの地図もグッド。

個人情報が若干かいま見えますが、ペルシャ語を解読して悪用しようなんて思う人がいないことを望む。

 次に、一緒に行ったマイクのビザですが、最初はマイクの住んでいるパリでビザを取得する計画でした。時間がかかることは予想していたのですが想像以上で、1週間や2週間そこらでは難しいようです。イランの知り合いにインビテーションを出してもらったりもしたのですが、時間切れでした。ロンリープラネットによると、パリ、ロンドンなどイランビザを取るのが非常に難しい都市、というのがあるそうです。

 で、パリでビザ取得を断念、最後の手段が空港での即時発給ビザ。以前はトランスファービザだのなんだのいろいろあったようですが、今、観光客に出るのはこれ。7日間有効のツーリストビザです。ビザには「Non extandable(延長不可)」とくっきりはっきり書いてあって、ビザ取得後、延長の可能性をいろいろ模索したのですが、どうも難しいようで断念しました。空港のビザオフィスでももっと長い期間のビザがもらえる可能性がないか聞いてみたのですが、他にチョイスもなければ交渉の余地も無し、という感じでした。というわけで、本当はイランに10日ほどいたかったのですが、7日間に確定。ちなみに、帰りの便の予約などはノーチェックで、非常に簡単に事務的に発給されました。(そういう制度なのか、ラッキーだっただけなのか、そういうことは分かりません)

 イランは国土も大きく、のんびりしている国なので、しっかり見ようとすると7日というのは短いです。ただ、逆に7日以内の旅行であれば、わざわざ前もって大使館に出向かなくても日本人は何も考えずにポンと飛んでいって入国できてイランを個人旅行できるということなので、これはこれでなかなか良いじゃないか、とも思います。これなら社会人の皆さんも休暇を利用して気楽にイラン旅行など可能ですよね。非常に旅行して楽しい国なのでおすすめですよ。僕もまたそのうち気楽に行ってみたいな、なんて思ってます。
 
 ただ、空路以外での出国を検討されている方には、冒頭で書いたような問題があり得ますので、注意して下さい。

 あとは近隣諸国でビザを取って陸路入国という手もありますが、それについては私は体験していないので省略。各種ガイドブックやバックパッカー先輩諸氏のウェブサイトやブログなどをご参照下さい。

註: ところで、「七日間ビザ」の意味ですが、入国日は数えずに七日間とのことです。何回も確認しましたし、8日目に出国してなにも言われなかったので、間違いないと思います。ちなみに、期限を過ぎて滞在すると「不法滞在」と言うことになってしまい、出国の際に一日何千円という罰金と書類手続き(運が悪いとそこで足止め)が待っているそうです。

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