4月12日木曜日

クリーブランド・インディアンズ 対 ロスアンジェルス・エンジェルズ
本拠地開幕戦@ミルウォーキー!?

Cleveland 4, LA Angels 2
(6-4)
  Final 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
LA Angels 0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 7 1
Cleveland 0 0 0 0 0 1 0 3 X 4 7 2
Box Score
WP: A. Fultz (2-0) S: J. Borowski (3)
LP: S. Shields (0-1)
(4-2)

ちょっと長めの前書き:観戦に至った経緯と、なぜインディアンズ戦がミルウォーキーか?
4/1に満を持して開幕したメジャーリーグ2007年シーズンですが、1週目の半ばから中西部と東海岸にかけて寒波が到来。ニューヨークでは雪のヤンキース戦となり、シカゴではホワイトソックス戦が「低温のため試合中止」、各地で目出し帽をかぶってプレーする選手が見られる、といった寒い幕開けとなりました。そして、その影響を一番受けたのがクリーブランド・インディアンズ。シカゴでのホワイトソックス戦を2勝1敗で勝ち越しクリーブランドに戻ってきて、4/6金曜日、シアトルを迎えての地元開幕となったのですが、断続的に降り続く雪のため、1試合目は5回裏二死満塁で1時間以上中断の末後、結局、ノーゲーム(リードしていたにもかかわらず(@_@)!)。翌日以降はダブルヘッダーを組んで対処しようとしますが、非情にも雪は降り続き、月曜日まで結局1試合もできませんでした。結局、火曜の時点でも30センチくらいつもっていたとか。最初は雪に大喜びして携帯で雪のグラウンドの写真を撮ったりしていたシアトルの選手もいたそうですが、4日もプレーできない、というのは想定外で、最後はみんなあきらめ顔だったとか。

そして、次の問題は、翌日10日火曜日から予定されていたクリーブランドでのエンジェルズ戦をどうするか。天気が許せばここで改めて本拠地開幕戦、となるわけですが天気予報は最悪。今回のカードはエンジェルス主催にしてLAで行ってはどうか、という案も最初あったようですが、選手の移動や前売り券の問題があり却下。いろいろ議論された結果、月曜日の朝に驚きの決定が下ります。「会場をミルウォーキー・ブルワーズの本拠地、ミラーパークに移動して、そこでインディアンズの「本拠地開幕戦」を行う!」。クリーブランドにできるだけ近く、使用可能なドーム球場ってことで選ばれたようです。3連戦以上をまるまる流したとか、主催試合の球場を別のところに移した、ってことは過去、ハリケーンが来た時などに若干あるようですが、それが開幕戦となると前代未聞だとかで、ニュースでも結構取り上げられていました。

さて、その晩、何かアップデートがあるかなあ、と思ってMLBのニュースサイトを見て驚きます。「明日からのエンジェルス戦のチケット販売開始。全席$10」!!クリーブランドからミルウォーキーまでは車で8時間とかの距離があるので、さすがにクリーブランドで観戦予定だった人にミルウォーキーに来てもらうわけにはいかないわけですが、全席$10ぅ〜〜?!とてつもなく安いです。どうやらインディアンズが本気で心配してたのは「本拠地開幕」を誰もいないスタジアムでやらないとならないのか、ってこと。クリーブランドからマスコットを連れてきたり、近場の傘下マイナーリーグの関係者を動員したりすることにしたそうですが、もうとにかく誰でもなんでも良いので来て欲しい、ってことだったそうです。

「$10」は安いよなあ〜、とチケットサイトを見てみると、さすがに良い席はばんばん売れていきます。カブスの球場だったら$50以上はするような席はどんどんなくなりました。滅多に見られないア・リーグの試合が突然そんな値段で見れることになったんだから、当地の野球ファンはそりゃ嬉しいですよね。

というわけで自分も、先週も野球見にいっているし平日だしで迷ったのですが、友人と話して見にいくことにしてしまいました。選んだのはすいていると思われる3戦目のデーゲーム。バックネット裏最前列とかは既に売り切れてしまっていましたが、それでもシカゴじゃ$100は積まないと座れないようなかなり良い席をゲットできました。

試合当日

ミルウォーキーはシカゴの自宅から車で90分ほど。デーゲームなので朝にはもう出発です。野球日和の天気を期待しましたが、予報通り「曇り時々雪」...冬だね、こりゃ。

ブルワーズの本拠地、ミラーパークに到着。駐車場からてくてく歩いていく道のりは風が吹きすさび寒い、寒い。
突然の開催が影響したのか、開門予定時刻になってもなかなか入れてくれません。寒空の中、えんえんと待たされました。

開いた時には、かなりの行列になっていました。ざっと見回したところ、それと分かるインディアンズのファンはほとんどいません。他方、エンジェルスの帽子やパーカー、応援ボードをもった人が結構いました。「本拠地開幕」、先が思いやられる...
ようやく暖かい球場内に。この前来た時と違い、天井は閉まっていて暖房が入っています。

移動前のデーゲームでは試合前の練習はキャンセルされることが多いので、あまり期待しないできたのですが、やってました!エンジェルズは練習無しでいたが、代わりにインディアンズがぎりぎりまで練習していました。写真は、インディアンズの打撃練習。

メジャーの球場はどこもたいていそうなのですが、グラウンドと内野席がとても近く同じ高さで、遮るものがありません。このミラーパークもそんな感じで、上の写真のように、内野席の一番前からホームプレートはすぐそこ。身を乗り出して手を伸ばすと、転がってきたボールが拾えるくらいです。

さて、打撃練習で感銘を受けたのはインディアンズの主砲、トラヴィス・ハフナーです。最初、ハフナーとは分からなかったんですね、というのも、ほとんどの選手、背番号が見えなくて。上の写真、打撃練習の最後の組ですが、ショートのジョニー・ペラルタと、控えのマルテと一緒に打っていた左打ちの選手、誰だろうなあ、と思ってみていたのですが、明らかに打球が違うのです。打撃練習を観察するのは趣味でよく見てるんですが、普通、「こいつは結構飛ばすなあ」「とかこいつは打球が早い」「調子が悪そうだ」くらいの差はあれど、メジャーの選手はみんなものすごく上手で、フォームが独特とかいうのはあっても、打撃の内容がそこまで違うことってあんまり無いんですよね。でも、その左バッターは他の2人と較べると格段にすごかった...ペラルタだって長打力はなかなかのものなんですが。
 まず、そのバッターがケージに入って最初の2,3球で目を見張ります。軽々と確実にものすごい飛球を飛ばします。でも、そこからがさらにすごい。突然、打球がライナーやラインドライブに変わります。あれ、どうしたのかな、と思ってみていると、なんと打球の方向が一球ずつ右の方へ少しずつ変わっていきます。これが測ったようで、角度で10度だか20度だか分かりませんが、等間隔って感じで、2塁の方向から1塁の方まで全く打ち損じなしで機械のように芸術的に打ち分けていきました。こんなの見たこと無いよ。。。顔も体格もバッティングフォームもものすごく特徴的、というわけではなかったので、この時点では「あんなにすごいのはハフナー以外ありえないよなあ」というくらいに思っていたのですが、試合中にバッティングフォームを見て「ああやっぱりか」と確認しました。
 エンジェルスのゲレロみたいに体格が違うわけでもないし、アダムダンとかみたいに巨漢で見るからにHRバッターって感じでもないし、パッと見、ごく普通のメジャーリーガーって感じなんですよね。もちろん腕っ節とかはものすごく鍛えてある感じはしましたが。三振はしないし、出塁率もすごいし、現時点では間違いなくメジャーでも有数のバッターなんだけど、インディアンズでDHで分かりやすい個性が少なくて、日本では知名度が低いのかな?

練習が終わった後、空腹を満たしつつきょろきょろしたのですが、いろんなファンがいました。手に一杯のベースボールカードを握りしめて、あの2番をつけている選手はペラルタだな、と子供に教えているメジャー大好きパパ。。。子供に一生懸命DHの説明をするお父さん。「ア・リーグにはな、指名打者制度って言うのがあってな、...」。普段はたまにテレビの中でしか見ることのできない球団が突然やってきたという非日常の高揚感が伝わってきます。

バックスクリーンはこんな感じ。インディアンズのロゴの下で、ブルワーズ対パイレーツの試合の宣伝をしているわけのわからなさ。この直後には、インディアンズのDVDの宣伝が。(^^;
試合開始前のアメリカ国家。今日の歌い手は、他に人がいなかったのか、ミラーパークの広報担当のおじさん(ぇ。
歌っているのはここ、ホームプレート後方。なかなかの歌声でした。

スタンドは今日は開放しているのは内野の下半分のみ。デーゲームで試合開始前なのでまだ空きが見えますが、これが試合後半には...
プレーボール。先発はエンジェルズがルーキーのMoseley、インディアンズがローテ3枚目の左腕、Sowers という組み合わせ。(僕らはどちらも知りませんでした。)

オーダーを見て1つがっかりだったのは、エンジェルズの主砲ゲレロがDHだったこと。メジャーで一番と言われる鉄砲肩が見たかった。
1回裏、インディアンズの攻撃。1番バッターは大リーグの若手のホープ、サイズモア君。球場は結構盛り上がります。さすがにみんな、ホームチームのインディアンズを応援するみたいです。

グッズを持っているコアなファン、と言う意味ではエンジェルズファンが多い気がしたのですが、無党派層は自然にホームチームを応援して盛り上がるみたいですね!ちょっとホッとしました。
さて、片方はルーキー、もう片方はMAX140kmくらいの軟投派、ってなことで派手な打撃戦を期待したのですが、2人とものらりくらりと投げ続け、思わぬ投手戦になりました。

写真手前は、打順を待つハフナー。
出ました、野生児ゲレロ。見たことある人は分かると思うのですが、ゲレロってホント、どこからみてもゲレロって感じなんですよねえ。外野の遠くでアップしていても、一発で分かります。足が長くて細くて逆三角形でなんだか固い走り方。同じ人間とは思えない感じ。

メジャーでも数少ない素手で打つ打者でもあります。
うお、でかい!残念ながらこれはファール。

ゲレロはこの後、ヒットで出塁。先にヒットで出たオーランド・カブレラを2塁に置いたところで笑えるプレーがありました。1アウト1,2塁となって打者が追い込まれたところで、2走者がスタート、ダブルスチールです。しかし、キャッチャーから素早い送球、余裕でアウトのタイミングになってしまいます。ここで、Oカブレラ、3塁の直前でスピードを落とし半ば歩くようにあきらめモードで3塁へ。タッチアウト、と思ったのですがそれはフェイントで、すっと体を落としスライディング。3塁手のマルテはあわててタッチにいきますが、間に合わず判定はセーフ!(動画リンクはこちらで"Cabrera steals third: 400K"というところをクリックすると見れます。)3塁手のチョンボですが、しっかしOカブレラ、ずるがしこいなあ。。。性格出ました。(^^

ミラーパーク名物のソーセージレースです!あれ、去年はいなかったチョリソーなんてやつが増えてるぞ!ヒスパニックのファンにも敬意を示そう、ってことなのか?!この日はイタリアンソーセージが勝ちました(^^;)。

ちなみにレフトスタンド後方に見えている場所にいつもマスコットがいて、ブルワーズのHRが出ると黄色い滑り台を滑り降りてきたりします。
これがインディアンズのマスコット、スライダー。これがなんなのか、サッパリ分かりません。前日の試合ではインディアンズの選手のホームランの時に滑り台を滑り降りたそうですが、この日は二本もホームランが出たにもかかわらず、眠りこけていたらしく滑り降りるところは見られませんでした。
これはミルウォーキーのマスコットのバーニー・ザ・ブルワー。ということで、ビール職人ですね。きらきらうるうるした瞳とゴージャスな口ひげのコンビネーションが魅力です。
7回表が終わると、恒例のセブンイニングスストレッチ。これはメジャーの球場ではどこでもあって"Take me out to the ball game"をみんなで歌うのですが、今日はそれに続いてなんだかよく分からない歌が。まったりとした楽しげな歌で、歌詞に「barrel(樽)」ってのがやたら出てきてたので、多分、ブルワーズの応援歌なんでしょう。ぽかんとする僕らをよそに、周り中みんなノリノリで歌ってました。

で、レフトスタンドの上ではインディアンズとブルワーズのマスコットが腕を組んで踊ってました。

インディアンズ独特の応援もありました。インディアンズのチャンスやピンチになると、どこどこどこどこ、とあやしげな太鼓の音が(^^;)。。。実はこれライブで、本拠地からわざわざ同行してきたチームのドラマーが外野席で楽しそうに太鼓を叩いていました。インディアンの音楽をイメージしたとおぼしきあやしげなBGMも流れていました。

ゲレロの次の打席は敬遠。状況的には当然、というところだったのですが、この時はかなりのブーイングがおきました。

結局、球場は大入り。開放したエリアは超満員で立ち見も出ていました。平日のデーゲームでここまでとは思いもしませんでした。$10という値段も大きいんでしょうが、春の珍事で普段見られない2チームが突然やってきた、ってこともファン心理をくすぐったんじゃないかと思います。ファンを見ているといろいろいて、両球団のグッズを持っているコアな地元ファン、はるばるクリーブランドからやってきたインディアンズファン、1人で見に来て黙々とスコアをつけているみたいな人も何人もいました、あとはビールを飲んで騒いでいるお祭り付きな若者集団とか。

観衆の数は17,090。

試合は投手戦で7回まで1対1。8回表にインディアンズの2つのエラーに乗じてエンジェルズが勝ち越しに成功。1対2になります。こうなるとエンジェルズ有利。というのはエンジェルズのブルペンは盤石で、8回はスコット・シールズ、9回はフランシスコ・ロドリゲス、ことK・ロッドという絶対のセットアッパーとクローザーがいます。

1点差のしびれる場面でスコット・シールズ登板。今日始めて150kmが出ます。
始めて見ましたが、とても躍動感あふれるフォームで、投げ終わったあと左にくるっと回転して打者に背中が見える感じで独特。
サイズモアへの投球。この後、結局、フォアボール。

あれれ、なんだか全然ストライクが入らないぞ。どうしちゃったんだろう、と思っているうちに、2連続フォアボール。主砲、ハフナーを迎え、またまたボール先行。そこへストレートが甘く入り、、、
なんと逆転のスリーランホームラン。うなだれるシールズ。主砲の一振りでゲームは逆転。観衆は大いに盛り上がりました。

打った瞬間に分かる特大のホームランでした。(個人的には、Kロッドを間近で見る機会を逃しちょっぴり残念)

(ハフナーのHRの動画はこちらで見られます。Hafner's three-run hormer: 400k というところをクリックして下さい。)
そのまんまクローザーのボロースキーがエンジェルズの反撃を断ち試合終了。結局、インディアンズはこのミルウォーキーシリーズを2勝1敗で勝ち越しました。良かったね。

というわけで、なかなか面白い試合展開で、ゲレロのタイムリー、サイズモアのホームラン、ハフナーの逆転スリーランホームランもあり、楽しめました。試合とは別に、ミルウォーキーでのインディアンズ戦というのの非日常感が球場や観衆から伝わってきてそれもとても面白かったです。だけど、やっぱりドーム球場は好きじゃないな。去年、ここに来た時はとてもきれいな球場だという印象だったのですが(リンク)、それは晴れて暖かい日で屋根が開いていたからのようです。でも、屋根があったおかげで試合ができたのですから、文句は言えないですね。春先の試合は、気候の良いところでの主催試合を増やせばいいのにな、と思います。

番外編:球場ご飯
普段、僕はMLBを観戦に行くと食べるものはホットドックと決まっているのですが、この日はおなかが減っていてボリュームのあるものが欲しかったので違うものにしてみました。ナチョスと言われるもので、三角形のチップスにチェダーチーズを温めて溶かしたものをかけて、酢漬けのハラペーニョ(とうがらし)を付け合わせて食べるものでどこの球場にもあるわりと定番のものなんですが、ミラーパークにはそれの豪華版がありました。ここでは、細かく切った肉を味付けして炒めたものと、刻んだトマトの入ったソース、そしてサワークリームをのっけてくれて、$6.75。これは今まで食べたナチョスの中でも一番の絶品でした。もはや別物。あと、以前も書きましたが、ミラーパークはやっぱりビールがなんだか美味しいようです。「札幌、ミュンヘン、ミルウォーキー」なんて地理でやったのを思い出します。

たっぷり盛りつけてくれました。ミラーパークは球場の売店の人たちもすごく愛想が良く親切です。田舎の良さ、って感じ。

白く見えるのはサワークリーム。クリームとチーズとたっぷりで、アメリカン、って感じですがお勧めです。

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