5月9日火曜日

日米の観戦スタイル

まず大リーグのボールパークで最初に気が付くのは、勝ち負けはさることながら、プレーの1つ1つの素晴らしさや、ゲーム全体の熱気を純粋に堪能できるようになってるってことですね。応援団の鳴り物なんてないし。バットがボールを叩く乾いた音が球場に響き渡るのはとても良いものです。日本のような「半ば強制」的な応援が無く、観客個人個人が自分好みの観戦スタイルでいられるのもアメリカ的な良さでしょう。まあ、アメリカでもビジターチームのファンはすごく肩身が狭かったり、というのはありますけれど。

 あと、テンポ感も良い。ピッチャーはさくさく投げ込んできます。牽制球も何球か続くと球場からブーイングを浴びます。巨人の桑田のように牽制球を投げ続けると言うことはありません(^^)。ただ、日本で良く勘違いされているのを見かけるのですが、試合時間が短ければ良いか、というとそういうことではありません。球場に行ってから球場を去るまで、いかに飽きずに楽しく過ごせるかですよね。メジャーでも回の合間のいろいろな出し物や7回の歌を歌ってのストレッチ(セブンスイニングストレッチ)は定番だし、ほとんどのファンはそういうのも童心に帰って楽しんでいると思います。いつだったか、回の合間で巨大なビーチバレーボールが1階席に落ちてきてみんなで転がして和んで楽しんでいたこともあったな。ですので、単純に試合時間というより、テンポ感、リズム感なんだと思います。早いだけでなく時にはほどよい休憩。野球は「間を楽しむスポーツ」、というのはしごく名言だと思います。メジャーでは一球一球の勝負に集中できるのが素晴らしいですね。試合のファーストストライクや、二死満塁での勝負、最終回の投球、球場全体が息をのんでプレーを堪能しようという雰囲気になります。プレーの後の拍手や歓声もとても気持ち良いですね。そういう幸せにひたる時、応援団のラッパが無くて良かった、って心から思います。

 ただ、一概に、アメリカ流の観戦スタイルが日本より良いかどうかは分かりません。僕としてはどちらもそれぞれの良さがあると思ってます。大リーグの試合に慣れたあとに、日本で外野席に行ってあの強制的応援で立ったり座ったりすると、「あー、日本の野球だぁ」、と実感するわけですが、それはそれですごくストレス発散になったり、まあ、こうやって球場が2つに分かれて勝ち負けに執着するのもスタイルかもな、とも思ったりするわけです。「ベースボールの神髄」とか言い出すと、確かにアメリカの方が良いような気もしますが、でも実際にはアメリカの球場でもオルガンがガンガン流れたり、花火が上がったり、懸賞の抽選をやったり、非本質的なところでショーを盛り上げる流れはありますから、シカゴのリグリー球場など一部のレトロで超硬派な球場を除いては、日本より圧倒的に優れている、ということもないでしょう。

 あと、もし仮にアメリカ流が良いと仮定しても、アメリカ流の応援スタイルを日本に持ち込むのは無理だと思うんですよね。「野球」の位置付けが違いすぎる。アメリカでもフットボール人気に押されて久しい、とは言われていますけれど、日本とは次元が違う。アメリカではファーム(日本の二軍)の試合にピクニック気分で大勢が観戦に行ったりしますし、僕がとても印象的だったのは、こっちではおばあちゃんが1人で球場に観戦にきて、しかもゲームのスコアをつけながら観戦してたりするんですよ!これは特殊ケースじゃなくて良くある光景です。日本人で野球のスコアをつけられる人ってそんなにいませんよ。でもって、おばあちゃん?!こりゃあ、日本をすぐこのスタイルに変えたい、と思っても無理ですよね。野球文化の違いになってきちゃいます。

 僕の個人的結論:僕はどっちも好きです。大勢が気楽に楽しむ、という点ではどちらにもそれぞれの良さがあるんじゃないでしょうか。とてもおおざっぱに言うと、試合の勝ち負けを堪能するなら日本、プレーを堪能するならメジャー、だと思っています。いずれにせよ、僕も日本の良さもアメリカを知ってより見えてきた面もありますから、現地でのMLB観戦はすごくお勧めですよ〜(簡単な話でないのは分かっておりますけれど)。

試合前の国歌斉唱。毎試合、有名なジャズシンガーから地元の高校のバンドまでいろんなミュージシャンが招かれ、球場全体で国歌を歌います。

 僕は別にアメリカ大好きってわけじゃないし、全員で国歌斉唱なんて気持ち悪い、と思う方ですが、プレーボール前のこのセレモニーだけは大好きです。この国の野球文化の奥深さや100年以上の激動の歴史の中、延々と続いてきた人々の野球への愛着が伝わってきます。野球を見る前に厳かで引き締まった気持ちになり感動してしまいます。身震いしながら一球目に集中しようというモードにさせられます。

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